本ページはプロモーションが含まれています
内部に一定量のガソリンを溜めるキャブレターは、インジェクション式とは違い、放置すると燃料固着が発生しエンジンがかからなくなります。
キャブが詰まると取り外して分解清掃するのがバイクメンテナンスの基本ですが、オーバホールは手間と時間がかかり調整にもまた一苦労です。
今回は1年以上乗らなかったオフ車のキャブレターを外さず、スプレーの泡クリーナーを直接注入する方法でキャブ詰まりの修理をしてみました。

バイクのキャブレター
日本語で「気化器」と訳されるキャブレター(carburetor)は、アクセルと連動しエンジンへ送る燃料と空気の濃度・供給量を調整する燃焼補助装置です。

2000年前後まで長らくガソリン車に搭載されてきたキャブレターですが、2025年現在、排ガス規制によりほぼ全てのキャブレター車の生産は終了しています。
排ガス規制
時代を彩る数々のキャブレター車が登場しましたが、20世紀後半、EUによる排ガス問題への規制提起がなされ世界はこれに追従する形で動くことになります。
日本においても従来の開発基準と異なる規制は徐々にステップアップされ、対応できないキャブレター搭載車の生産は終了を余儀なくされていきました。
2025年現在の規制は中古車にまでは及んでおらず購入もできますが、国内バイクメーカーの新車生産のほぼ全てはインジェクション車に移行しています。
インジェクションとの違い
空気と燃料の比率は“空燃比”と呼ばれ、インジェクションは「14.7:1」という有害物の排出を最小限に抑える理想空燃比を基準に開発されています。
この比率管理ができず規制対象となったキャブレターですが、趣向性の高いバイクにおいてはマイナス面もまた魅力の一つになるのかも知れません。
チョーク
キャブレターに備わり、ほとんどのインジェクション車に備わっていないのが「チョーク」と呼ばれる一時的に燃料の比率を大きくする部品です。
引くことでエンジンが冷えた冬でもかかりやすくなるチョークですが、引きっぱなしにしておくと今度はプラグが“かぶる”不調の原因になります。
押しがけ
押しがけは機能上インジェクション車ではできず、バッテリーが上がったりセルが回らない場面で非常に助かるキャブレターエンジンが持つ特性です。
その名の通りバイクを可能な限り速く“押し”、スピードが乗ったところでバイクに跨りテンションを掛けながらクラッチミートするとエンジンがかかります。(100%の成功率ではありません)
調整(キャブセッティング)
電子制御で最適な燃料を供給するインジェクションでは必要ありませんが、調整はキャブレターをオーバーホールした際などには必ず必要な作業です。
アイドリングの燃調を決めるパイロットスクリュー、空気量を調整するエアスクリュー、エンジン高回転時の燃料を調整するメインジェットなどがあります。
外さずバラさないキャブレター洗浄方法
キャブメンテナンスの定石オーバーホールは、自分で行っても部品費用と手間がかかります。
今回は固着したキャブレターの分解はもちろん、取り外しもせずに手軽な泡状キャブクリーナーでエンジン再始動にチャレンジしました。
最初はエアクリーナ側から噴射しましたが、最終的にはキャブレターのドレンにビニールチューブを繋ぎ、直接キャブ内にクリーナーを注入しました。
①:フューエルタンクのコックをOFF
まずは燃料タンクからガソリンの供給を止めるフューエルコックをオフにします。

※あとでキャブレタークリーナーを注入して様子を見るのでフューエルホースも抜いています。
②:キャブレター内のガソリンを抜く
ネジ式栓のドレンスクリューを緩めることで、キャブレターに溜まったガソリンをフロートチャンバーの底にあるドレンから排出することができます。

バイクや土間が汚れるのを防ぎ作業性を良くするため、ドレンホースを抜きビニールチューブを差してペットボトルで受けるようにします。

準備ができプラスドライバーでドレンスクリューを緩めてみると、トロリとした緑色の液体?が極く少量出てきただけでした。

ガソリン劣化の独特な香りが漂います・・・結構ハードに内部固着してそうな予感です。
③:泡状キャブクリーナーを注入
ビニールチューブの先にスプレー缶を繋ぎ、キャブレター内部へ泡状洗浄剤を噴射して送り込みます。

キャブレター内に洗浄剤が行き渡ると、エアベントホース先のワンウェイバルブからクリーナーが溢れ出てきます。

クリーナーが溢れ出たらドレンスクリューを締め、充填したキャブレター内のクリーナーが流れ出ないようにします。
④:時間をおいてクリーナーを排出
しばらくドレンスクリューを締めた(キャブレター内に洗浄剤を満たした)状態のままで放置し、泡洗浄剤が固着部分を溶かす時間を与えます。
数分間の待機後ドレンスクリューを緩めると、緑色に変色劣化したガソリンがクリーナーとともにドレンから排出されます。

待機時間を置き過ぎると、キャブクリーナーの強力な溶解成分がゴムやプラスチック製の部品を変形させてしまうこともあるので注意が必要です。
⑤:③〜④の作業を繰り返す
③から④の工程を何度か繰り返すうちに注入もスムーズになり、濃い緑色だった排出液も徐々に透明に近い状態で排出されるようになってきます。

キャブレター内の状況により差異はあると思いますが、今回は数分〜数十分程度の待機時間で様子を見ながら5、6回ほど繰り返しました。
簡単なオーバーフロー(フロート固着)の治し方
キャブレター内部のガソリンに浮かぶフロートは、一定量のガソリンが溜まると連動した弁によりガソリンの供給を止める部品です。
ガソリンが蒸発しフロートが下がった状態で固着すると、燃料コックを開けた際にキャブからガソリンが溢れるオーバーフローという現象が起きます。
この場合、キャブにガソリンを満たした状態でドライバーの柄などを使いフロートチャンバあたりを優しくコンコン叩くと、フロートの浮力により固着が切れて治る時があります。
キャブレターからガソリンがオーバーフローする原因は他にもありますが、慌てずまず最初に試してほしい一番シンプルな修理方法です。
無事エンジン再始動!
最初は全く流れなかったフューエルホースからドレンまで、液体クリーナーがスムーズに流れ出るようになったところでセルを回してみます。
無事にエンジンがかかり、久しぶりに気持ちの良い鼓動音を聞くことができました。

あとがき
このキャブレター洗浄清掃からすでに半年ほど経ち、たまにエンジンをかけながら調子は良好です。
まだしばらくこのキャブレター式の旧型オフロードバイクと付き合っていきたいと思います。
